健康福祉部 介護保険課
ケアマネジャーの資格更新を
デジタル化でスムーズに
トップ>
ケアマネジャーの資格更新をデジタル化でスムーズに
ケアマネジャーの資格更新手続きが複雑でわかりにくく、更新漏れによる資格喪失につながるおそれがある。また、必要な研修や受講状況の確認を担当する職員の業務負担・業務リスクが課題となっている。
ケアマネジャーが自分に必要な研修や受講状況を確認する負担を解消するICTツール等を構築・導入することにより、ケアマネジャーの負担軽減や事務を行う職員の負担軽減の度合いについて検証を行いたい。
ケアマネジャーの資格更新をスムーズに行えるようにすることで、離職防止を図り、介護人材の確保定着を実現したい。
・静岡県内でのシステム本格導入
・全国自治体への横展開(共通課題のため全国で導入可能)
・他の資格更新管理分野への応用展開
私たち介護保険課では、県内の介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格登録や更新申請に関する事務を担当しています。令和6年度の更新申請に関する実績としましては、更新対象者1,550名のうち、更新実施者は1,037名です。5年ごとに行われる資格更新の手続きを進める中で、「研修の受講漏れに気づかず資格を失ってしまった」「更新に何が必要か分からず直前になって慌てている」といった声を耳にすることが多くありました。実際、更新時期を逃して資格を失うケアマネジャーが毎年一定数います。 資格喪失は本人の離職につながるだけでなく、そのケアマネジャーが担当していた高齢者の方々が継続して適切なサービスを受けられなくなるおそれもあります。こうした状況を目の当たりにし、私たちは「ケアマネジャーに資格更新に必要な情報をもっと分かりやすく伝えられないだろうか?」と考えるようになりました。
介護支援専門員の資格更新には所定の研修を受講する必要がありますが、必要な研修の種類や時間数は前回の更新時期、過去の受講履歴、主任介護支援専門員(上位資格)の取得状況など様々な条件によって細かく分岐する制度設計になっています。特に主任介護支援専門員向け研修(いわゆる主任研修及び主任介護支援専門員更新研修)と通常の更新研修のタイミングが一致しないケースも多く、自身がどの研修を受ければ更新できるのか把握するだけでも一苦労です。また、自動車免許のように更新通知のハガキが届くこともなく、研修の受講計画や更新期限の管理はすべてケアマネジャー本人の自己管理に委ねられています。実際、更新対象のケアマネージャーからは
・「自分がどの研修を受ければいいのか分からない」
・「研修の日程調整や申し込み手続きが大変で後回しにしていたら期限が迫ってしまった」
・「更新手続きを忘れていて有効期限ギリギリになってしまった」
といった声が寄せられています。
忙しい業務の中で更新時期を失念したり、受講すべき研修の種類を間違えたりすると、最悪の場合は資格を失ってしまうのです。
一方、問い合わせを受ける私たち県庁職員側にも課題があります。窓口では、問い合わせ内容に応じて「介護支援専門員の資格・研修体系図」という複雑なチャートを一つ一つ確認しながら回答する必要があります。加えて、県が管理している研修履歴システム(通称「ケアマネシステム」)で個々の受講履歴を照合しなければ正確な回答ができません。ケースごとに条件が異なるため回答には時間を要し、内容を確認しながら話しているうちに通話が20分近くに及ぶことも少なくありません。当然ながら確認漏れや入力ミスといった人的ミスが起こるリスクもあります。さらに、研修内容は2〜3年ごとに見直しや変更が行われるため、最新の制度を把握しながら対応する必要があり、職員にとって負担が大きいのが現状です。実際、制度の複雑さに不慣れな新任職員が電話対応を行うことも多く、問い合わせ対応に要する業務負担と回答ミスによるリスクの両面で悩みを抱えていました。
上述のような課題を踏まえ、私たちは「ケアマネジャーが迷わずスムーズに資格更新できる仕組み」を実現したいと考えました。例えば、いくつかの質問に答えていくだけで「あなたに必要な研修はこれです」と教えてくれるガイド機能や、自分の資格登録番号を入力するだけで「あなたは〇〇研修を修了済み/未修了」と受講状況がひと目で確認できるようなシステムがあれば、ケアマネジャー自身が必要な手続きを簡単に把握できます。更新期限を忘れそうな場合でも事前に気づけますし、必要な研修に早めに申し込むこともできるでしょう。
加えて、研修内容は2〜3年ごとに見直しや変更が行われるため、研修内容の変更に対応できるシステムを構築することで、制度改正にも柔軟に対応でき、常に最新の情報に基づいた更新支援が期待できます。こうした仕組みがあれば、ケアマネジャーは煩雑な手続きに悩まされることなく本来の業務に専念できますし、私たち職員への問い合わせも減らせます。結果として資格喪失による離職者を減らし、介護現場の人材流出を防ぐことにもつながるのではないかと期待しています。
このように、上記の課題は私たちが担当する行政業務の中でも喫緊の改善が求められる重要課題です。単に県職員側の業務改善という枠に留まらず、地域の介護業界における人材確保やケアマネジャーの働き方改革にも直結する社会的意義の大きいテーマと考えています。
この課題に取り組むことで、介護人材の確保につなげていきたいと私たちは考えています。
背景
介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格は5年ごとに更新が必要だが、更新通知はなく、研修の種類や受講要件が複雑で自己管理が求められる(令和6年度実績:更新対象1,550名中、更新完了者は1,037名)。このため更新漏れや研修の誤認が発生し、資格喪失に繋がるケースも生じる。その結果、本人の離職や利用者のサービス継続に影響を及ぼす恐れがある。現在、対象者は県庁に電話で確認しているが、職員側も複雑な制度に基づく確認作業に追われ、人的ミスのリスクが高くなっている。本課題は全国の自治体に共通する構造的な問題でもある。
課題
ケアマネジャーの資格更新に関する周知不足と手続きの複雑さにより、資格更新漏れによる喪失者が発生し、介護人材の確保やサービス提供に影響が出る可能性がある。年間約100件の問い合わせが県庁に寄せられ、1件あたり20分の対応時間を要するうえ、研修体系が複雑なため職員の負担が大きく、ミスや再問い合わせも発生している。特に新任職員には対応が難しく、業務の継続性と正確性に課題があり、効率化とリスク低減が求められている。
求める解決策
私たちは、「質問に回答していくと、自身に必要な研修がわかる」仕組みや、「資格番号を入力するだけで、自身の受講状況を簡単に確認できる」仕組みなど、ICT技術を活用した解決策を求める。介護支援専門員側・県職員側双方の業務負担軽減やミス防止に資する新たな仕組みの構築を目指す。また、研修内容は2〜3年ごとに見直しや変更が行われることを見据えた仕組みの構築が望ましい。
想定する
実証実験内容
ICTツールを構築・導入することにより、ケアマネジャーが自身に必要な研修や受講状況を把握する情報収集の負担、ならびに研修受講状況の確認や問い合わせ対応、記録管理等を行う職員の作業負担を軽減できるかを検証する。
実証実験成功後
の発展性
介護支援専門員の資格については国のシステムで一元管理されているものの、研修履歴は都道府県が独自に管理している。他の都道府県でも同様の課題を抱えている可能性があるため、展開も期待できる。
提案企業に
求める専門性
・ボットツール等のICTツール開発に知見があること
・ICTリテラシーが高くないユーザーへのわかりやすさ、操作の簡便性を意識できること
・取り扱う情報の重要性が理解できること
プロジェクトの
進め方
打合せは対面でもオンラインでもどちらでも可能である。
必要に応じて、ケアマネジャーへのヒアリングも可能。
提供可能な
データ・
環境等
県は、匿名化した研修履歴データや資格証の更新情報、過去の問い合わせ記録、業務フロー図などの資料を提供可能。実証フィールドとして、職員や一部ユーザーの協力も想定している。
プログラム
終了後の
本格導入
実証実験の結果、解決策の有効性が確認できた場合には、静岡県庁への本格導入に向けて予算化を含めた検討を行う。